特別講演

大須賀公一氏 (大阪大学)

「体と場の相互作用によって生まれる陰的制御が
「知」の素になる!?」

■ 概要
オーストラリア北部ノーザンテリトリー(ダーウィンが首府)には 高さ数mにもなる巨大な蟻塚群を構築するシロアリが 数種類生息している. この蟻塚一山には数百万匹ものシロアリが住んでおり, 無数の役割分担された部屋が作られ, 吸気や排気のための ネットワークも構成され,いわば一大都市国家が建設されていると言えよう. あの小さなシロアリたちのどこにあのように巨大な構造物を設計し 建築する能力が備わっているのだろう. この種の問いかけは人類に古くから投げかけられてきた素朴な疑問である. 我々はこの謎を解くためにしばしば,シロアリを実験室に連れ帰り彼らの 脳を詳細に解析する.そして驚愕する. 「この小さな脳(微小脳)のどこにも蟻塚を建設するための設計図は 埋め込まれていない, しかも非常に能力の高いシロアリが少数いて彼らが全シロアリを 指揮しているようにも思えない.」と...実に不思議である. 一匹のシロアリの脳の中には蟻塚の設計図は描かれていないのに彼らを蟻塚の場においてやるとあたかも役割を認識しているかのように 蟻塚の中の自分の役割を果たすように行動する. しかも,その行動は様々な環境の変化に対してもリアルタイムに 適応しているように見える. ところがそのシロアリを場から離すとそのような能力は消失してしまうように見える.

本講演では,このような基本的に素朴な疑問に対する解へ少しでも 近づこうと筆者らが最近考えていることを紹介したいと思う. そして,そこで考察することが現在の知能ロボットと呼ばれるロボットが 知能を持っているように見えない一つの理由ではないかという推察を行ってみる.

■ 略歴
1959年11月16日生.1984年3月大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了.同年4月(株)東芝入社,総合研究所勤務. 1986年10月大阪府立大学工学部助手.その後,講師,助教授を経て,1998年5月京都大学大学院情報学研究科助教授, 2003年12月神戸大学工学部教授,2009年4月大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授となり現在に至る. ロボティクス,制御工学,レスキュー工学などの研究に従事. 1986年度計測自動制御学会学術奨励賞,1988年度システム制御情報学会椹木記念賞奨励賞,計測自動制御学会論文賞, 2002年同学会教育貢献賞,2005年第11回ロボティクスシンポジア特別奨励賞,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門ROBOMEC表彰, 2007年同部門学術貢献賞などを受賞.2008年日本機械学会フェロー.2009年度日本ロボット学会フェロー.